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モロッコのライ
presented by NN

モ ロッコのライ歌手達もアルジェリアに負けてられません。(実際はやはりアルジェリアに押されてますけど)
 モロッコ産のものとオラン産のものとではだいぶ音楽事情が違うようです。
 モロッコではライをうまく自分達のルーツに取り入れていると言うのでしょうか。そしてモロッコでは巨匠HasniやKhaledのような太い声を出すライ歌手はほとんどいません。
コブシはそれなりに効いてますが声はとても高く、モロッコ男性の華奢さが伺えます。(笑)

 まずは Mohamed Ray 。彼はモロッコを代表するライ歌手です。
彼のライはライ・センチメンタルと言えるオラン・スタイルのライ(Cheb HasniやCheb Nasro)などと似ていて、それほどモロッコ独特さを匂わせません。(うーん、やっぱりビジュアル的にはモロッコ独特の胡散臭さってのはありますけどね)
 モロッコでは特に女性からの人気が高いようですが、見た目はそのへんのオッサンです。

代表曲は「Je t'aime a la folie」。ミドルテンポでなかなかいい曲ですよ。

 ここ数年 Cheb Rezki の人気はすごいです。マラケシュ出身と言う彼の知名度はまだまだマグレブ諸国内に留まっているようですが、「Ana ghaltan」が大ヒットし、モロッコのディスコでは注目度ナンバーワンです。まずカセット屋さんで「最近売れているモロッコのライが欲しい!」と言うと必ず出してくれるのはRezki。
  モダンなアレンジになっていてピアノを多用したり、レゲエなリズムのものがあったり、エスノ的な音も多いに聞けるので彼はかなりイケてる!と自身を持って言える歌手でしょう。私も大ファンです。
 声はかなり癖があって、今までのライ歌手にはない「なよなよ」した歌い方で、上手いのか下手なのかわからない。でも積極的にラップに挑戦してしまったり
(だいたいラップの部分はラップ歌手に任せていることが多い)かと言ってあま〜いバラードもさらりと歌いこなしてしまうので、なかなかのやり手らしい。
でもちとジャケの眼鏡が気になりますね…。(笑)

Mohamed Ray

 

Cheb Rezki


れから非常にアップテンポでエネルギー溢れる音を出している Cheb Mimoun という歌手をご紹介します。最もモロッコ度の強いライ歌手と言ってもいいでしょう。
  ヴァイオリンの音が絡み合うあたりはアトラスを思わせるシャアビーな音です。民族的な要素が極めて強く、積極的にモロッコサウンドを取り込んだMimounのライ。ライを聞いている気分にはなれませんが、刺激的!そしてこれもライなのかぁとライの多様性に念を押されます。Mohamed Rayとはとても対照的です。

 そしてrezkiと同様マラケシュ出身の Cheb Amrou はなかなか凝った音を出してますよ。お薦めアルバムは「Matebkiche」。彼もフランスで活躍している歌手です。彼の声はCheb Mami系で、高く細くそしてキレ味最高。
 
ノリのよさ的に踊るには持ってこい!ダンス音楽でもあるライを発揮しまくってます。ただ彼の曲を聞きすぎるとどん臭いライが恋しくなります。(って私だけ?)

 Cheb Anouar はポップライを確立したアルジェリアの Rachid Baba Ahmed の甥にあたります。ってことは純アルジェリア人なんですが、彼はモロッコとの国境の町トレムセン出身の歌手。

  彼が歌うスタイルは実にモロッコのシャアビを思わせる曲調で、アルジェリアのライには見られないものなのです。
  というのも、彼自身幼い頃から結婚式などでモロッコの民謡を専門にを歌って活動していた天才少年で、なんと12歳でライの王様ハレドとのデュオを果たし、将来を多いに期待されていた歌手でした。
 95年のRachid Baba Ahmedの暗殺事件後、音楽活動を停止していましたが、ようやく数年前に復帰したようで、「Amour secret」という曲をヒットさせています。レゲエとのコラボレーションアルバム「Big Men」にも登場していました。

 モロッコ国内でも知名度の低い JALAL という人のカセットを入手したのでオマケでご紹介。
 カセット屋の兄ちゃんに「モロッコのライが欲しい」と言ったところ、RezkiやMohamed Rayに紛れてきたのがこのカセット。ジャケからしてあまり聞きたい気分になれなかったのですが(笑)中身はそうですね、アラブ歌謡を思わすようなバックコーラスとのコール&レポンス風な曲もあったりでハズレではありませんでしたが、いまひとつですかね。今後を期待しましょう。

Cheb
Mimoun
Cheb
Amrou
Cheb
Anouar
Jalal


そして女性ライ歌手だと一番有名なのは Cheba Zahouania
  彼女はモロッコ人の父親とアルジェリア人の母親を持つオラン生まれの歌手です。ライ歌手が非常に活動が困難な時代にアルジェで活動をしましたが、ハスニが暗殺されたのをきっかけにその翌日にフランスに渡っています。
 彼女はアルジェリアも含めて現役女性ライ歌手の中で一番人気があると言えます。主にはフランス国内で活動的にライブを行っています。女性ライ歌手に多い、低めのしゃがれ声は渋くてかっこいい!「Goulou lima」は数多いヒット曲の中でも一番好きな曲です。映画「シェルタリング・スカイ」でも使われていたほどです。さすが、Zahouaniaは見逃してなかった…。この映画の音楽へのこだわりが伺えますね。
  フランスのRAPグループ113と共演した曲「Les bronzes」という曲はかなりイケてます。Zahouaniaのパンチのきいたしゃがれ声がばっちりキマってます。

 
現在モロッコで活躍する女性ライ歌手の代表的存在の Cheba Zina
 カサブランカ出身のめちゃくちゃ美人さんなんですが、またこれが渋い声を出すんです。

 現在モロッコで活躍する女性ライ歌手の代表的存在の Cheba Zina
 カサブランカ出身のめちゃくちゃ美人さんなんですが、またこれが渋い声を出すんです。いやぁ、アラブの女性とは迫力がありますよね。
 Zinaはサッカーが大好きで、カサブランカのサッカーチームの応援歌も歌うようです。Zinaの曲で「Hawel」というベルベル歌謡を思わせるような曲がお薦めなんですが、カセットでもなかなか手に入れることができません。

 他、Cheba ManalCheba LailaCheba HouriaCheba Hind などが活躍してます。
  モロッコでは非常に女性ライ歌手ががんばっているようですが(もちろんアルジェリアでも活躍してますが)、あまり男性からは人気がないように思いました。
  きっと女性歌手には女性のファンが多いのだと思います。宗教的にも複雑な位置にあるライというジャンルで女性が活躍することは未だに難しいのでしょうか…。その辺りは宗教的な大きな壁があるのでしょうね。でも一番の原因は音的におもしろいと思えるものが少ないかと思います…。

Cheba Zahouania

 

Cheba Zina
Cheba Manal
Cheba Laila
Cheba Hind


ライ歌手をご紹介してお気づきになったかと思いますが、名前についていCheb(Cheba)は「若い」という意味です。ライ歌手にはだいたいついていることが多いので、名前でライ歌手を見分けることはできます。
  ライ歌手はわりと男性は高い声を出す人が多いのですが、女性は逆みたいですね。そして曲名や歌詞からもわかると思いますが、歌詞にはよくフランス語が混じっています。
  これはアルジェリア人は当然のようにフランス語を話しますし、そしてフランス国内にも多くの移民がいます。植民地時代の苦難を訴えるライでもありますから、そういった複雑な心境を訴える形でもあります。
  それからライの歌詞はライ特有の言葉がたくさん使われています。これはアルジェリア人にしかわからない言葉でもあり、同じマグレブでもモロッコ人が100%歌詞を理解しているわけではありません。「これはライ(アルジェリア)特有の言葉だから意味はよくわからない」と言われます。ライの内容が全部わかったら立派なアルジェリア人なのですね。

 日本ではまずKhaledやMami、Faudelのようなヨーロッパで人気のあるライ歌手のCDなら大手レコード店で手に入れることができます。
  ただそれ以外のライ歌手に関しては入手困難ですが、たまに中古レコード店やワールドミュージックを主に扱っているお店で見つけることもありますので根気よく探してみてください。
  ライ史上、画期的イベントとなった「123Soleils」ライブ収録のCDは一番手に入り易いと思いますのでお薦めです。Khaled、Rachid Taha、Faudelといったビッグスター達の夢の共演ですから聞く価値大です。ライブですので、聴衆と一体になった熱いステージが伝わってきます。
  あと一番いいのはライの集大成といったコンピレーションアルバムが手っ取り早いです。これが一番手に入れやすいかもしれません。だいたいヒットした曲を網羅してるので、現地で聞いたことがある曲が必ず入ってるでしょう。どん臭いライから今風のライまで様々聴けるのでお薦めします。

123 Soleils

 

Absolute RAI

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