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フランスのマグレブ系ラップ
presented by NN


IAM(アイアム)

1989年アルジェリア、スペイン、イタリア、セネガル、マダガスカル系の移民で結成された6人組。フレンチ・ラップ第一世代にマルセイユで誕生した代表的グループ。マルセイユが舞台でアルジェリア系俳優サミー・ナセリ主演の映画「TAXI」のサントラを担当し、一躍注目を集めました。「TAXI」の映画自体、社会問題に触れるようなことはないものの、アルジェリア系サミー・ナセリとIAMのサントラが起用された映画がフランスで1週間で250万人を動員するという大ヒットシリーズになったことはアルジェリア系フランス人がフランス社会において当たり前の存在になってきている証拠です。

政治問題で緊迫したマルセイユをどうにかしようという意識が込められたアルバム『 L'Ecole du micro d'argent 』(1997年)は戦国武将のジャケットで話題。 ライにおいてはKhaledのアルバム『 Sahra 』収録の「 Oran Marseille 」(オラン出身のKhaledとマルセイユ出身のIAMということです)では驚くほどのキレのよさで登場し、ますますライとラップの普遍性を証明しました。そして6年半ぶりの新作となる『 REVOIR UN PRINTEMPS 』が2003年9月にリリース。久々ながらもフレンチ・ラップに君臨し、若者たちを代表するヒーローであり続けるIAMの貫禄が滲み出ている作品です。


NTM

パリ郊外サン=ドニ出身。NTMはNique Ta Mere(マザーファッカー)の略で、IAMと同じラップ第一世代に誕生し衝撃を与えたグループです。
辛辣な歌詞で大統領への脅し、人種差別や警察、国民戦線を激しく攻撃。彼らのこうした暴言が若者達の暴動へ走らせたことで3ヶ月の実刑判決を受け、ミュージシャンとしては異例の6ヶ月の活動休止を余儀なくされました(フランスで実刑を受け活動休止処分になったミュージシャンはボリス・ヴィアンとNTMだけ)。93年に発表したアルバムはある1曲が問題になって発売禁止になったものの、95年にリリースした3枚目のアルバム『 Paris Sous Les Bombes (爆弾の下のパリ)』は15万枚の売り上げでディスク・ドール賞を獲得しました。

映画「LA HAINE(憎しみ)」(※)のヒットやNTMの成功は若者の不安が高まる現実を皮肉にも証明することになりました。

※ マチュー・カソヴィッツ監督のパリ郊外の殺伐としたゲットーに暮らす若者を描いた映画「LA HAINE(憎しみ)」(95年カンヌ映画祭で最優秀監督賞受賞作品)の台本からインスピレーションを得たミュージシャンが書き下ろしたサウンド・トラックはラップのコンピレーションになっています。かなりカッコいいです。


113(サン・トレーズ)

現在フランスで最も人気の高い3人組ラップグループ。2002年にリリースした『 FOUT LA MERDE 』ではCheba Zahouaniaとデュオ(それともサンプリング?)している『 Les Bronze 』が収録。 気だるさ、怠惰感やらが感じ取れるかなりエッジのきいた西海岸スタイル。第一世代に比べ、歌詞のラディカルさには欠けるものの(マグレブ系の若者がフランスでラップを歌っている時点で、潜在的に社会的メッセージと連動しているところはあります)、音的には親世代が持ち込んだアラブ、アフリカの素材を積極的に取り入れたよりおもしろい。

2003年4月に『 FOUT LA MERDE 』の焼き直し版+新録7曲が収録された『 dans l'urgence 』が発売されました。ライというジャンルを超え、アラブ歌手としてのスターの座を狙っているCheb Mamiやマリの歌姫Oumou Sangareとマリ・ポップス風の曲でデュオ、その他有名なアーティストとの共演で賑わせています。


K-mel(カメル)

ALLIANCE ETHNIK(80年後半から90年代にかけて、アルジェリアではテロの影響で外国のアーティストがコンサートができなかったのですが、その後初めてコンサートを行ったグループです)のMCであるK-melはアルジェリア系で、Cheb Mamiと『 Parisien du Nord 』でデュオした人気ラッパー。
その後リリースした初ソロアルバムの『 Reflexion 』(2001年)は全体的にR&Bでスタイリッシュに仕上げたNYスタイル(アメリカの人気ラッパーWarren G.と歌う『 I want it all 』が収録。アメリカ制覇したmamiと息が合ったのもわかりますね)。アルジェリアで初コンサートをやったという誇りが表われているアルバムでもあります。

Beur(マグレブ移民二世)と言われることや、二つの文化の間で葛藤する世代という定番なレッテルを貼られることに強く否定。(「Beurって一体何?」と。)自分はフランスで、そして二つの文化の中で自然に共存してきたとポジティブ(もちろんラップは表面的にネガティブなことを発言していても、若者の勇気と希望の具現化です)。
ALLIANCE ETHNIKのアルバムでも社会批判や問題提起しているものの、逆にその思いを軽くお祭気分で歌いあげてしまう。このへんが他のグループとは違うところです。

 
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