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フランスで活躍するマグレブ系ミュージシャン
presented by NN

移民の多いフランスではここ数年で急速に移民二世によるミュージシャン達がフランスのミュージックシーンを変えつつあります。
 その中でも大数を占めているのはマグレブ系移民。(一番多いのはアルジェリア系)。フランスで極めて立場の弱かったマグレブ人の音楽がフランスで受け入れられたことは、多民族国家なるフランス文化の象徴でもあります。

  ライブームがきっかけとなりライだけでなく、最近はアルジェリアのベルベルの血をひくカビリー系歌手や、ライやグナワ、フラメンコなどその他様々なマグレブ音楽の要素を取り組むエネルギッシュなバンドの活躍が目立ちます。ここではすべて紹介しきれないので、特に活躍している人達だけを取り上げます。


まず、フランスでのアラブ音楽シーンを紹介するにあたり、この人なしでは語れません。移民達を代弁する先駆者 Rachid Taha
  タハはライが発祥したオラン生まれですが、10才の時に家族と共にアルジェリア移民としてフランスに渡っています。
  同じ境地の中、働いていた工場の仲間達と結成したバンド「カルト・ド・セジュール」でデビューし、この時代からアラブ・ルーツを色濃く根ざし、あらゆる音楽性を目指す刺激的なミュージシャンでした。
  バンド解散後もソロとしてフランスにおいての人種差別や社会の制圧を糾弾するメッセージ性の強い音楽を発信し続けてきました。

  もともとジャーナリストになりたかったタハはジャーナリズム的な観点に到達しやすい一番簡単な方法が音楽だったようです。そんな彼ですから、決して歌唱力で勝負するタイプではありませんが、素晴らしく知的な人柄、抜群の音楽センスには脱帽です。
  アルジェリアのDahmane El Harachiが作曲した「Ya rayah」はタハがカバーしたことで一気にヒットし、様々なアラブ諸国でもカバーされています。
 2001年初来日したことで、彼の存在を知った人は多いと思いますが、ちょうど9.11事件直後の来日ということもあって、アラブ人ミュージシャンとして注目されました。タハの初来日がこのような時期と重なったのも何かの縁だったのだと思います。

Rachid Taha

 NHKフランス語会話ではライブ後のインタビューも取り上げられたり、その後も「Voila, Voila」という右翼体質な国民戦線を告発したタハの歌が「今月のシャンソン」というコーナーで取り上げられることもありました。
  「ほらほら、おれらを追い出すことはやつら文明人の救済措置だ」と問題提起するタハの歌が日本で放送されることになるなんて…。

  ところで、こんな強烈な存在のタハですが、モロッコでの人気はまずます。どちらかと言うとあまり好きではないと言う人が多かったですね。

  やはり移民の代弁ですから、国を離れていない人達がそこまで強烈なメッセージを求めているかといったらそうでもなさそう。
  あとは恐らくパンク&ロック的な音もあまり現地の人にはうけないようです。タハの音楽センスは、なかなか現地の人達に浸透するのは難しいのかな…。しかしタハはマグレブを代表する絶対的存在であることは忘れてはいけません!

※120万部を突破した『世界がもし100人の村だったら』のコンピレーションCDにタハの曲が収録されています!これにともなってCDマッチングピアノ譜も登場です。いやぁ、すごいですね。


日本でも一部で注目を浴びたバンド Orchestre National de Barbes はそれぞれ育ちの違うマグレブ系11人グループ。バンド名の「バルベス」とはパリで暮らすアフリカ、アラブ系人街の場所の名前です。
  タハの曲にも「バルベス」という歌があるくらいで、移民達にとっては中継地みたいな重要な場所です。その「バルベス」の名を取っているくらいですからこのバンド、やはりいろんな音がしてきます。
  「バルベス」という街を移民達の一つの国と考えたら、じつに国立バルベスオーケストラという名にふさわしいですが、オーケストラと言っても西洋スタイルの楽器編成を想像してはいけません。
  グナワに登場する鉄製のカスタネット"カルカベ"やライをはじめ、マグレグの伝統音楽の要素はもちろん、さらにレゲエ、アフロを融合させたアフリカ、アラブ音楽のコラボみたいな派手な音を出しています。 アルバム「Poulina」は日本でも一部で多少注目は浴びたようです。

  ヴォーカルとベースを担当してるアルジェ出身の Youcef Boukela はロック、ボサノヴァやジャズなどの演奏活動をしていたようですが、その時代に Cheb Mami やカビリー歌手 Takfarinas 、そしてかの有名なアルジェリアのジャズミュージシャン Safy Boutella などのマグレブ系アーティストと共演する機会があったようです。
  やっぱり彼らの音楽に刺激されたんでしょうね。ただONBの音を聴いていると、アラブ度よりもアフリカ度が強いです。勢い任せな感じがしてしまい、アラブ特有のドン臭さも欠けていて、なんとなく物足りないのが正直なコメントです。


Orchestre National de Barbes


それからよくOrchestre National de Barbesと並び紹介されているバンド Gnawa Diffusion はグルノーブルで結成されたバンド。
  主にマグレブ系のみのメンバーでもないようですが、リーダーの Kateb Amazigh は父親が有名な作家 Kateb Yacine で、名前「Amazigh」はベルベル語で「自由人」という意味(ベルベルのことをAmazighとも言います)。
  ベルベルの文化に根ざした上で、様々な文化を違和感なく自由に取り込んでいるバンド。

 でもONBみたいな賑やかな音は出さず、バンド名からもわかるようにモロッコの伝統音楽グナワの影響が強く、レゲエの要素も多用しています。
  アルバム名「Bab El Oued Kingston」はアルジェリアの下町バベル・ウェドアルジェとレゲエの国ジャマイカの首都キングストンを取り上げたわかりやすいタイトルで、マグレブ諸国でも重要な位置を占めているレゲエをかなり意識したアルバムになっています。

Gnawa Diffusion


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