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南部の砂漠近くの町や村では、女性が真っ黒な衣装で全身を被っている姿が見られます。
エッサウィラのように、風があって比較的涼しい町の女の人のハイク(全身を覆うマントのような長い布)でさえ白なのに、日ざしの強い、しかも夏には気温が50度を越えるようなエリアでなぜ「黒」という色が選ばれたのか、ちょっと不思議に思えます。
その疑問に答えてくれるような、とあるドライバーがしてくれた、モロッコの昔話です。
むかしむかし、まだモロッコが南の砂漠の国からやってくる人々と戦争をしていたような昔。
砂漠のほとりの町々でも、いずこの国とも同じように、戦に出かけて行くのは男達でした。
戦なのですから、当然傷付きながらも帰って来る男もいれば、そのまま家族の元へは戻ってこない男もいました。
ある家では戦の終わりには葬式を出し、またある家では近所をはばかりながら、きっとひっそりと主人の帰還を祝っていたのでしょう。
けれども村から男達が減ってしまったのは村そのものにとっての悲しみであったし、女達も、黒い衣装で喪に服している人とそうでない人がいる事を心苦しく思った事から、みんなが同じ黒い衣装に身を包むことになったのが、南部モロッコで、女性達が黒い衣装を選んだ理由なのだということです。
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