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モロッコにくると、なぜかおまじないにかかったように「買わない買わない」とつぶやいて土産屋の前を通り過ぎていってしまう日本人も少なくありません。
土産屋のしつこさを思えばそれもしかたないことですが、そんなにきばって避けなくても、ときには自分の欲にも忠実に。
うるさい土産屋の軒先の、小さな飾りにこころひかれてふらふらとなんて、本当ならショッピングの醍醐味です。
相手がどんなにしつこくても、「いる」のか「いらない」のか、あるいは安ければ欲しいのか。自分がどうしたいのか分かっていれば、断るのも簡単。恐れることはありません。
本当にいらなければ、「たとえただでも、それは気に入らないから欲しくない」といえばモロッコ人だってそれが欲しくないことがわかります。土産屋がしつこいのは、お客の中に、なにか完全に決まりかけていないあいまいなものを感じて、そこに食い下がろうとするからです。
そして、土産屋との交渉がこじれて大変な思いをするのは、本当は欲しいのに、なぜか値段はぎりぎりまで交渉しなければならないという妙な義務感にかられてしまうから。
欲しくないふりをしろとか、値段を下げるためには、じゃあねといって店を出ていくふりをしろとか。そんなセオリーばかりが気になって、いるのかいらないのかという、肝心のことを忘れてはいけません。
定価のないモロッコでの買い物は、自分の価値観というものを自分が見つめ直す作業でもあります。
商品にはマテリアル代があり、仕事代が含まれ、店の場所代も消化し、経費や店員の給料をまかない、かつ利益を出すための数字をつけなくてはなりません。一体そういったものを、自分はどのように判断するのか。
自分の経験や想像力を総動員して、「これくらいなら妥当であろう」という価格より少し低めに提示して自分の希望価格に近づけていくわけですが、そういった自分の価値観の基準がしっかりしないうちから、ガイドブックで言われるような小手先のテクニックを使っても、しかたないかもしれません。
そう、本当に欲しいと思うなら、たとえそれがいくらでもかまわない!
世の中には、自分が捨てようとしているおもちゃに、とんでもない値段をつける人だっているのです。もっと自分の価値観に自信を持って買い物しようではありませんか!
「日本人だからってほいほい払うと思うなよ」と、日本の名誉を背負ってはじめから値段交渉に喧嘩腰でかかるツーリストのほうが多いのが現実ですが、すでに多くのモロッコ人業者が、「日本人、特に個人客はけちである」という印象を共有しているので、それを理由に気張らなくても、平気です(苦笑)
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