旅の情報編09:笑えない話(笑)
夕闇のひったくり 噂の真相


 
旅の情報編
文化編
旅の記憶編
生活情報編
リンク集
FAQ:よく頂く質問
シネマコレクション
ブックコレクション
おすすめレストラン
当サイトについて
管理人について
Traveler's cafe
旅する掲示板
マグレブ連絡帳
私のイチオシスポット
We love morocco
others
モロッコ雑貨
砂漠への旅
管理人にメール
悪夢の食中毒


それはパリからバスでモロッコにやってきてようやく2、3日が過ぎたときのことでした。ちょっぴり暇だった友人のムハンマドが、用事があるから、と西部の海岸部に連れていってくれることになったのです。ついて早々、バス旅の疲れも抜けきらないでいましたが、こんなチャンスを逃す手はないと二つ返事でとびつきました。

まず最初の用事があるというマラケシュへ。
それぞれ勝手な1日をすごして翌日、用事が済んでカサブランカに向かおうというお昼のことでした。マラケシュを出る前にお昼を食べていこうということで、街をまわっている最中に見つけた一軒のレストランに入りました。

かわいい猫達が何匹かたむろしていましたが、客足の方は、多いでもなく、少ないでもなくといったぐあい。私たちはいい匂いをさせていた、魚のケフタ(つみれみたいなもの)のタジンをたのむことにしたのです。
つけあわあせには当然フライドポテト。パンと一緒に運ばれてきたタジンはそれはそれはおいしそう、いや、実際すごくおいしかったのです。しっかりと煮込まれた野菜と魚のだしでとっても深い味。私とムハンマドはお皿がすっかりからになるまでパンをちぎって食べたのでした。

おいしかったねー、と言いながら車は一路カサブランカへ。けれども道半ばで、私たちのお腹は、既に変調をきたしていたのです。

ちょっと休憩ね。そういってムハンマドは車を止めて、カフェに入っていきました。注文もそこそこにどこかに消えてしまったムハンマド。このとき既に彼はお腹をこわしはじめていたのですが、私はまだそれほどきていなかったのです。
飲み物を飲み終えて、再び道を進み始める私たち。途中の街にある精神病院の話なんかしながらのんきに道をいっていたのですが、私はだんだん疲労感に襲われてきました。

「ごめん、疲れたから、ねるよ」そういって運転手の苦労をよそにごーごー寝はじめた私。なんだか体がだるいのです。しばらくして目が覚めても体のだるさはまだとれず、なんだか熱も出てきたような感じ。それも疲れているせいだろうと、あまり深刻に考えていませんでした。
日もすっかり落ちて暗くなった頃、ようやくカサブランカへ到着。

彼はカサブランカへはあまり来ないということで、あまりホテルも知りません。くたびれた顔をした私のためにやっと彼が見つけてくれたホテルは4つ星。何でもいいから休ませてくれとそこに決め、部屋に入ると私はどさっと、ベッドにたおれました。

けれども横になったのもつかの間、 なんとも恐ろしい腹痛の波が押し寄せたのです!!
ふらふらとトイレに駆け込み、もう出る物もない、というくらいひどい下痢に驚く私。
よろよろとベットにたどりつくと、疲れとだるさと腹痛で、もう完璧に動けなくなってしまいました。

具合の悪そうだった私を心配した友達は、ベッドの上で固まっている私を見てさらに心配になったようです。なんか欲しい物ある?というので、水とコーラをたのみました。
戻ってきたムハンマドは、他にも「好きだっていってたから」とありがたいことにチョコレートも買ってきてくれたではありませんか!脱水になってはいけないと水を飲む私。けれどしばらくして、なんとそれさえも腹痛の波と共にトイレへと吸い込まれていくのです!

あまりにも頻繁にトイレを往復する私に「これはマラケシュのあのタジンだ。僕もここに来るまでの途中、お腹の調子、悪かったからな」と言うではありませんか!
そういえば、海なんか近くにないうえに、いつだって気温が高めのマラケシュで、どんな魚が混ざってるかもわからない物を食べたわけですから、おそらくそれが正解でしょう。
しかもしかっりと煮込まれていたあの料理。あれはしっかり煮込んであったのではなくて、おそらく昨日の残りみたいなものだったといえなくもない。
なにしろカレーだって二日目の方がおいしいし。

けれども生まれてこの方、腐ったほたるいかの煮物やガンジス川の水、アフリカの屋台料理にだってあたった事はない、鉄壁のイブクロを誇っていたのに!
美味しかったのに、とか、疲れたところに油断してるからこうなるんだ、と後悔しても後のまつり。
熱まで出始め、だんだんトイレに行くのさえつらくなってきました。

人生で2番目くらいに高そうな熱だと思われたので、ぜひ体温計がほしかったのですが、あいにくフロントにはないとのこと。いいのか悪いのか、つらい、という気分はますます盛り上がってしまいます。
そうこうしながら、刻一刻とつらそうになっていく私に、ムハンマドはおろおろしていることしかできません。運転で疲れているはずなので、私は平気だから、とひとまず彼には休んでもらうことにして、私は再びトイレ、ベッド、トイレ、ベッドの繰り返し。あまりの熱のあつさと腹痛で、その夜は、なんとそのまま、トイレのすぐ横で、冷たいタイルの上に横になって眠ってしまったのでした。

そして翌朝。
長かった夜が明け、すっかり動けなくなってしまった私のために、買い物に行ってくると言って出かけたムハンマドがなかなか帰ってきません。しばらくして血相をかえて帰ってきて報告するには、なんと車の窓ガラスが割られ、中の物が盗まれているというではありませんか!
普段なら、都会にでてきて車の中に物を残すなんてまねは絶対にしないはずの彼が、昨日は突然苦しみだした私のために、車の事なんてすっかり忘れてしまっていたのでした。

その夜はかなり冷え込んでいたらしく、車の中に置いてあったジャケットが盗まれたうえ、その下に隠してあった買ったばかりのラジカセもやられていたのです。
弱り目にたたり目、とはまさにこのことと、私もすっかり気落ちしてしまいました。

一晩で3キロぐらいやせたんではないかというようなやつれ具合の私をみかね、彼は近くのレストランにハリーラを飲みに行くことを提案してくれましたが、けっきょくこれもムダ。私は何かにつかまらずには歩けないし、何を食べても出て行くだけ。その日の私は液体とチョコレートだけ。それでも出る物が出れば良くなるさ、と病院の「び」の字も思いつきませんでした。

なにか物が食べられるようになったのは、結局その晩から3日後のこと。こんなに病んだのは、人生でこのときが最初。それ以後一度も、あのときほどひどい目にあうようなことはまだありません。
疲れたときはゆっくり休んで無理をしない。
レストランはなるべくはやっていそうな店を選ぶ、といった基本中の基本を改めて思い知らされた食中毒でしたが、出産を終えた今、あのときのゆるゆるズボンがちょっぴりなつかしい私なのでした。

 
夕闇のひったくり 噂の真相

管理人は著作権を放棄しておりません。
情報の引用、転載、転用にあたっては必ず管理人yama-sanにご連絡下さい。
(c) yama-san all rights reserved