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犠牲祭というのは、旧約聖書に出て来るアブラハム(アラビア語読み:イブラヒーム)が、次男のイサク(コーランでは長男のイスマイール)を神へのいけにえにささげようとしたところに、「お前の信仰心はよくわかった、代わりに羊をささげなさい」とお告げがあった、というお話に由来しているイスラム世界のお祭りの中でも一番大きなお祭りで、メッカの大巡礼を行った後に、本来はそれを達成したことをお祝するために行われるお祭りです。
国民みんながきちんと休む大きなお祭りといえば日本ではお正月ですが、イスラム圏の人々にとってはこのお祭りがまさに「お正月」。(新年を祝うお祭りではありません)
お正月には工場も休みなら、道路を走る車の数も減るように、犠牲祭当日のモロッコもほとんど同じような調子です。
幹線道路を走る車やトラックの数さえまばらになり、いつも聞こえてくるはずの物売りのラッパや清掃車のクラクションもまるでない、お祭りなのに、なんだかとても静かな日なのです。
そんな街の中で、騒ぎにうかれる人間達の心と、どこかで危機を察知しているかのような羊の鳴き声だけが街の空気をざわつかせているその日と、その日が去り行くまでのお話です。
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■ 食用にされるのはもっぱらオス。メスはあまり食べません。 |
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■ 郊外のスークでは羊が安く買える、ということで、日帰りで遠くまで出かける人も。 |
羊が家にやってくる!
犠牲祭について世俗的に解説するならば、各家庭で羊をさばいて、お腹一杯肉を食べる事ができる特別な日。
普段肉を食べる事が難しい家でも、なんらかの形でお祝のための肉を準備するのが大半ですが、一般家庭におおいては、いくら大きなお祭りとはいえ、お金はそんなに使えません。けれども家のプライド?にかけてなんとか普通にお祝するために、この日の何ヶ月も前から準備がはじまるのです!
羊の相場は、やはり直前になると高騰して手が出しにくくなるため、2、3ヶ月も前から家の中にある「羊部屋」(南部の土作りのカスバにはよく見られます)に新しく羊を買い入れたり、近所の農家に預けたりして「その日」のための羊を準備する家庭も少なくありません。
また、羊の産地によっても味が違うということで、なるべくおいしい羊がいい、と産地にまで気を配って購入したりもする念の入れよう。 |
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