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毎年9月頃に行われるイミルシルの婚約ムッセム。
このお祭りは、アイトハディドゥと呼ばれる部族のお祭りです。
世界各地から観光客がおしよせるこのオートアトラスの一大イベントは、こんな伝説に彩られたものなのです…
イミルシルの悲恋伝説
アイトハディドゥ族はアトラスの山深い谷に暮らす部族。
その中にさらにわかれた二つの部族がありましたが、この部族、一方はイミルシルに暮らすとてもオープンな気質の部族(アイト・ヤッザ)、もう一方はアグダル(イミルシルよりもティネリールに近い場所)に住み、とてもがんこで、自分はベルベルの部族の中でも高貴な部族だと自負するグループ(アイト・ブラヒム)だったのです。
ある時、そんな二つの部族の若者が恋に落ち、お互い結婚することを望んだのですが、どちらの部族もそんな気質の違いから、二人の結婚を許すはずなどありません。
失望した二人はついに湖に身をなげて死ぬことで結ばれることを選び、湖にはそれぞれIsli、Tislitという名前がついた、という伝説です。(物語のバージョンはいくつかあり、泣いて暮らした二人の涙が湖になった、というパターンもあります)
けれどもこの悲しい事件がおこってからというもの、アイト・ハディドゥの人々は、Sidi Ahmed el Mgheniという賢者の和解の元、若者に結婚について完全な自由を与えようと決めたのでした。
それで生まれたのがイミルシルの婚約ムッセムなのです。
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■ マラブーへのお参りも、スークでのお買い物も大事なイベントの一つ。 |
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■ 伝統衣装に身をつつんだ女性達も、もちろん普段着のお買い物! |
この時ばかりは親がこの人、と決めた相手ではなく、お互いひかれあう相手を選ぶことができるという自由が与えられるこのお祭り。
この機会には、この2つの部族の争いごとを調停した賢者(マラブー)、Sidi Ahmed el Mgheniのお墓のある場所で、だれのいいつけにしばられることなく結婚を決める事ができるようになったということです。
ガイドブック等では、男女が結婚相手を捜して集うお祭り、といった紹介をしているものもありますが、実際そんな人身売買のようなことが行われる機会ではありません。
地元の人々の言う通り、ベルベル人にとっては女性はとても大切な労働力ですから、いくらなんでも祭りの日にたまたま出会ったような相手に大事な娘をあげるわけがありません。
そもそも結婚したいと思う男女は普段から農作業の合間に出会っていたりするので、結婚そのものが出会ってすぐにその場で決まるわけではありません。
このお祭りの機会に男女とも伝統の衣装を身にまとい、女達はとびきりのアクセサリーをつけ、ほおをと鼻の先を赤くした化粧をして集うのは、具体的に相手を見つけるためというよりかは、村や地域の人々に、自分は結婚適齢期を迎えた、ということをアピールするためであったり、離婚した人は、また新しく配偶者を捜しています、ということを公にアピールする機会として利用するから、という方が適切でしょう。
また、このムッセムはオートアトラス山中の人々がこれを機会に年に1度集い、農作物や家畜の売買を行う日お祭りは、お祭りそのものだけでなく、それぞれがとても離れた村々が、その年の出来事や農作物の具合などについての情報交換を行う機会としても大切にされていたものです。 |
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