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いったい何度、じゅうたんの売り口上を聞いたことでしょう。
モロッコのお土産のなかでも一番華々しいし、自分が布やじゅうたんといった織物がすきということも手伝って、どこでも毎度、なんにも知らないふりをして、じっくり耳をかたむけてしまいます。
これはトゥアレグのもの、ノマドのもの、というのは全国に共通してよく聞く口上。
中には同じものに異説を唱える土産屋もいて、これは結婚式のために女性がつくるもの、これは男の作るタイプのものなどなど。
その他にも、カーペットの模様は文字の代わりで、そこには部族のいろいろな物語が描かれているのだ、とか。じゅうたん一つとっても、実にさまざまなモロッコ事情がかくれているようで、ますます興味をそそられます。
けれどもあまりにもたくさんの説があるじゅうたんの柄についての説明、生産者についての解説ですが、そのほとんどは売るための美辞麗句。
染料についての説明も同じことです。
本当はそれぞれの絨毯にきちんとした歴史や伝統があるのに、お土産屋さんはそういった文化的な視点から話をしてくれることはほとんどありません。
原色の毒々しい色を前にして、どうするとこれはサフランだとかミントだとか言えるのだろうと思ったりしつつも、どこかで「ほー」と思っている自分がいたりするのに、一人笑ってしまうのでした。
やっぱり旅人がお土産に求めているのは、文化も文化ですが、ちょっとロマンティックな話題に彩られた嘘でもあるのかもしれません。
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